本を読むときに、テキストに蛍光ラインや赤線を引いてきました。

でも、引いただけで、そのまま放置されていました。

せっかく、そのときに何かを感じて引いた蛍光ライン・・・

そんな蛍光ラインたちをときどき、ここに書き写して行く事にしました。

30. 『ユーロクエイク』p65 ダニエル・バースタイン (三田出版I)


EC委員会の新委員長となったジャック・ドロールが、1984年12月にパリ郊外の閑静な別荘、ロワヨーモンに委員達を集めた背景にはそのような事情が会った。「ヨーロッパは生延びるか衰退するかのいずれかを選ばなければならない」と、ドロールは委員たちを前にして言った。歴史に残るこの機会をつかみそこなえば、ヨーロッパの21世紀は、「われわれの料理と文化を好むアメリカや日本の観光客が集まる博物館」と大差ないものになってしまうだろう。しかし、ドロールが実行可能と信じるサバイバル計画にECが進んで「大きな責任」を負えば、ヨーロッパは生き残れるだけでなく、「世界の強国として」生まれ変わることができ、グローバルな経済戦争で日米と互角にわたりあえるようになるはずだった。


この本は1991年に日本語版が出版された。翌92年には、マーストリヒト条約が締結され、欧州単一市場が生まれた。それから、今年でちょうど20年になる。その後、単一通貨ユーロの創設と、着実にジャック・ドロールの望み通り、欧州の統合は進み、加盟国はその恩恵を受けていた。しかし、ギリシャ、スペインと、相次いで、財政破綻問題が発生し、単一通貨ユーロの問題点が指摘され、ユーロ分裂が噂される。しかし、2012年10月の動きを見てみると、私には分裂よりも、より統合が強まり、ユーロ統一政府への布石が着実に進んでいるようにみえる。なぜなら、今回の一連の騒動の中で、銀行同盟構想やEUの経済委員会が加盟国の金融政策や税制改正、予算編成を調整できる権限を与える話がちらほらと聞こえくるからだ。ジャック・ドロールはもうこの世に居ないが、ユーロ統一政府を創設する意志は、生きている。


投稿日:2012-10-14